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『発達障害児の思春期に伴走する(後編) 』

思春期 2015年11月19日

TEENS新宿スタッフの金井です。発達障害児の思春期に伴走する(前編)では、一般的な思春期の特徴、および発達障害児の場合は思春期を乗り越えるのがより困難な傾向にあるというお話をさせていただきました。

今回は、実際のTEENSの現場における思春期のお子さんとのやりとりを、ほんの一部ですがご紹介させていただきます。

学校で起きた問題の整理をする

TEENSのお子さんが「クラスでこんなことがあったんだけど、嫌がらせだと思う?」「最近、部活の友達からメールが来なくなったんだけど、どうしてだか分からなくて」などと不安気に漏らすことがあります。思春期の子どもたちは、仲間内の波長を合わせることを重視し、異質なものを排除する空気に流れやすいので、微妙なニュアンスの冗談に反応できなかったり、自身の興味関心ばかりまくし立て話がかみ合わなかったりする発達障害のあるお子さんは、居場所を失いやすくなります。しかも思春期以前と違って、それが教師の見えないところで起こりがちです。

ただし、よくよく聞いてみると本人にも非がありそうな場合も多いのです。自分の言動が周囲にどう受け止められているかをキャッチできないため、あるいは同じことをされたら自分だって嫌な気持ちになるという想像が働かないために、悪気はないけれど無神経な振る舞いで周囲に不快な思いをさせてしまっていることがあります。お子さんによっては、一方的な思い込みや被害認識で問題状況をさらに大きくしてしまうことも見られます。

その場(学校)にいないスタッフにはもちろん判断や断言は難しいのですが、お子さんの心の揺れを受け止めつつ、できるだけ状況を知るための手がかりを引き出して問題を客観的に整理していきます。「もしかしてあなたのその発言て、周囲にはこう聞こえたんじゃない?」「TEENSでも、その態度は人に勘違いされすいよと言われていなかったっけ?」と問いかけていくうちに、お子さんは落ち着いて振り返りができるようになります。

明らかにいじめやからかいの対象になっているとか、大きなトラブルに発展する可能性がある時は、介入してくれそうな大人はいるか、どんな言い方なら相談できそうかなど、本人の力となる方法を一緒に考えます。明日また前向きな気持ちで学校に行けるようにするお手伝いもTEENSスタッフの大事な仕事だと考えています。

親とは別のスタンスで対峙する

思春期前のお子さんも思春期のお子さんも、できるだけたくさん褒めてあげるべきです。おうちで褒めたことはTEENSでも褒め、TEENSで褒めたことはおうちでも褒めていただくのが良いようです。あまりに子ども扱いするような褒め方は厳禁ですが、基本的に褒められて嫌な気持ちになる子はいませんので。

しかし、お子さんがTEENSで何か悪さをして叱った時や修正すべき問題行動について指導した時には、保護者にどのように報告しようかスタッフはしばしば頭を悩ませます。

思春期前のお子さんの場合には、どちらかと言うと保護者と「一枚岩」になるのが有効です。具体的には、TEENSで指導した内容を報告し、帰宅後に再度反省を促してもらう、自宅でもTEENSと同様に声掛けや注意をしてもらう、逆に保護者から自宅や学校でのアプローチ方法をうかがい、TEENSでも足並みを揃えるなどです。身近な大人が皆で一貫した態度をとることにより、お子さん本人は安心し、納得しやすくなります。まだ親が怖い年代でもあるので、言い訳や言い逃れが通用しないとなると観念するしかなくなるというのもあります。

一方、思春期のお子さんの場合は、そう簡単ではありません。話の中に「親」を持ち出すこと自体をひどく嫌がったり、「知られるとうざいから親には言わないでよ」などと訴えてきたりします。「どうせ親にチクるんでしょ」なんて攻撃的に言われ、どきっとしてしまうこともあります。仕事上、保護者に報告しないわけにはいかないのですが、もしそのまま報告してしまったら、お子さんとスタッフの関係性が壊れてしまうかもしれません。

思春期のお子さんに対峙する時は、親と距離を置いた大人、角度の違う意見の言える大人である必要があります。「あなたの言うことは一理あるけど、私の経験からはこういう見方もできるんだよ」「今までTEENSで見てきたお子さんの中にあなたと同じ課題の人がいてね。。。」などと独立した大人の一意見として、思うところを伝えます。時には、「私はあなたのお父さんとは少し違う考えだな」とか「お母さんにこんなふうに話してみたら風向きが変わるかもしれないよ」とあえて突っ込んだ話もしています。

セッションでのやりとりは、一旦様子を見て保護者の方に全てを報告しないことや、報告するにしても自宅での伝え方に配慮して欲しいと事前にお願いすることがあります。思春期のお子さんは、まだ親の監護に服する年齢だとは言っても、親に干渉されたくないという気持ちが強い年頃ですから、それだけ細やかな対応と本人の意思の尊重があるべきだと思うのです。また、身内である親には反発してしまうお子さんでも、スタッフの言うことには耳を傾けやすいケースが多いので、スタッフが担える役割をあらかじめ保護者と打ち合わせておくことも大切です。最終的には、本人が将来苦労しないようにと考えているのはどの大人も同じはずですから、それまでのアプローチは色々あってもいいと思っています。

ちなみに、TEENSに通うお子さんの中には、思春期が来ても親といつまでも仲良し、あるいは学校であったことを毎日全部親に話しているというケースが少なくありません。保護者の方からは、あまりに幼くて逆に心配だ。。。という声も聞かれます。一般的には、思春期の子どもは親への反抗を通して自立を果たすように言われていますが、思春期における反抗が見られないことが一概には悪いこととは言えません。親と子の価値観のズレがあまり感じられない場合や、子どもの成長に従って親が上手に手を離している場合は、そこまで反発して親と距離を置く必要がないからです。もちろん、お子さんの元々の性格によっても精神面の変化の現れ方は異なると思います。何らかの理由で反抗したい自分を無理に押さえつけているケース以外は、それほど心配いらないと考えています。

障害受容の段階に寄り添う

TEENSは発達障害のあるお子さんが通う場所とはいえ、自身の診断名や障害特性について告知を受けているお子さんと、まだ告知を受けていないお子さんの両方がいます。しかしながらほとんどのお子さんが、「周りの人よりも上手にできないことが多いなあ」「どうしていつもトラブルになってしまうんだろう」「自分がおかしいのだろうか」と心を痛めています。

障害告知と一口に言っても定義は難しく、いつどのようにどこまで伝えるべきかという答えもお子さんによって違うはずなのですが、告知後のご本人が障害を受容していくプロセスに周囲がどのように向き合っていくかが問われるのは間違いありません。本やテレビの情報から「発達障害という人達に自分は似ている」と考えて親に率直にたずねることができるお子さん、診察時に主治医から説明された後に親子で話し合えるお子さんもけっこういらっしゃる一方で、悩みを言語化することが上手でない、あるいは悩んでいること自体を周囲に知られたくないと考えるお子さんもいて、はたから見ていてしんどいのだろうなと感じることがあります。

ケースによっては、自信のなさの裏返しで万能感を抱いているように見える場合、できない自分を隠すためについた嘘でがんじがらめになっている場合もあります。自身を客観的に見ることが苦手という特性と、失敗してしまう不安を打ち消したいという無意識の心のメカニズムが関係しているようですが、いずれにしても苦しいのはどのお子さんも同じでしょう。これら障害受容に絡む葛藤と前述した思春期の混乱が重なると、より出口にたどり着くのが困難な状況になりやすいのではないでしょうか。

「これからの人生はどんな自分で生きていこうかな」という心構えをするのが思春期です。自身の不得意なことを自覚するだけにとどまらず、練習したらできるようになるかもしれないこと、無理に克服しようとしないで他の方法を取り入れたほうが良さそうことを見極めることができると楽になります。そして、得意なことは強みとして活かしながらも、不得意なことについては、工夫の仕方や代替手段を知る、周囲の人に特性を理解してもらう、周りの人の助けを上手に借りるなどの対処ができるようになって欲しいと思います。思春期はそれらを自分の問題として考えられるようになる年代なのです。

TEENSのセッションでは、その手助けをさせてもらっています。セッションに参加し始めたばかりの頃は「なんでこんなところに来なくてはいけないの」と渋々通っているお子さんに時々出会います。自分には必要がないプログラムだと思っている、他の子と一緒にされたくない、好きなことに時間を使いたい、と聞かれる理由は様々です。ところが、親に騙された気持ちで参加しているうちに、「ここでは馬鹿にされないから話しやすい」「自分と同じことで悩んでいる子がたくさんいたんだ」「前より○○が良くなったと言われて嬉しかった」といつのまにか笑顔と前向きな発言が増えていくお子さんをたくさん見ています。思春期は自己肯定感が下がりやすい時期なので、安心して失敗できる、安心して自分を出せる環境を提供しながら、社会に出る準備は厳しいこともあるけれど仲間やサポーターがいる、方法次第で状況は変えられる、というメッセージを日々伝え続けています。

おわりに

以上長くなりましたが、発達障害のあるお子さんの思春期の実態について書いてきました。それに伴走することはなかなか骨が折れるのですが、スタッフ間で試行錯誤しながら、お子さんが大人になっていく過程に寄り添わせてもらっているという喜びもまた大きいことが分かっていただけたら嬉しく思います。

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