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発達障害のあるお子様向け キャリアデザイン教育
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発達障害児と共にお薬に向き合う姿勢

2015年6月26日

 

TEENS新宿スタッフの金井です。
さて、このスタッフブログでは発達障害*児のお薬にまつわる色々な情報をご紹介してきました。

<お薬を使う意義>
・日常生活に支障が出て入る時は、その症状を一時的に軽減する
・二次障害が起こる危険性が高まっている場合は、自尊心の低下を食い止める
・その他の訓練と併用する、理解ある環境を整えることで、相乗効果を上げる

とはいえ、お薬は飲んだほうがいいとか飲むならこの薬がいい、あるいは何歳で止めたほうがいい、などのことはどれも第三者が言えないことです。ご本人と家族が医師の説明を聞きながら選択するしかないことだからです。

ただ、どんなに素晴らしい学習支援もグループプログラムも、ご本人が後ろ向きになっている状態より、本人が落ち着いて前向きに取り組める状態で導入したほうがずっと効果が出やすい、これは真実でしょう。そのための準備として服薬という選択肢があると考えていただければと思います。

<TEENSでの関わりの例>
なかなか学習にとりかかれない、とりかかってもすぐに気が散ってしまうA君。保護者の方からあるお薬を飲み始めたという連絡がありました。A君本人が「飲んだら、勉強に集中できるのは分かってるんだけど。実はあんまり飲みたくないんだよね」と話してくれました。服用すると、頭がぼーっとしたり、だるい感じがしたりするのだとか。いくらプラスの効果があったとしても、副作用がつらければ飲みたくないだろうなと納得。その感覚、抵抗感は本人にしか分からないだろうなと思いました。
スタッフは以下の対応をしました。

・指示がすっと入る、遊びと学習の切り替えが早い、作業中にキョロキョロしたり、他の人の会話にいきなり入ったりすることが減っているなと感じることを本人に伝えた。
・「それが薬の効果だから飲んだほうがいいよ」という言い方はしない。また、(飲み始めて体がお薬に慣れるまでは副作用が強く出るが、徐々に少なくなっていく人が多いのですが、個人差がある問題ですので)「今は我慢して飲もう」というようなことも言わない。
・客観的に感じた、頑張っているところ、できているところ、伸びているところを率直に伝え続けた。

A君は結果的にお薬を飲み続けることを選び、生活には安定感が出てきました。チャレンジできることも増えました。我々スタッフも、A君が自身の行動の変化を客観的に自覚するためのお手伝い、頑張る気持ちを引き出すお手伝いはできたかなと振り返っています。

<ご本人の服薬理解>
医療の世界には、「服薬アドヒアランス(服薬する本人がお薬が必要な状況を理解し、意志を持って服薬しているかどうか)」という言葉があると聞きます。服薬アドヒアランスが低いと、お薬を飲み忘れたり、医師の指示通りではない時間や回数で服用したりしてしまうことも考えられます。それでは得られる効果も変わってしまいます。

当初TEENSでは、服薬について積極的に関わってはいませんでしたが、保護者の方からどちらのクリニックでどのようなお薬を処方されているかという情報をいただくことが増え、上記のケースのようにセッションの中で服薬についてのご本人の気持ちの整理にお付き合いするというようなことも出てきました。小さいお子さんの場合はなかなか難しいことですが、ご本人を取り巻く応援団の一角として必要に応じたサポートを行っていきます。

最後になりますが、「できた!」「褒められて嬉しい」という記憶は、薬の効果が消えてもお子さんの中に残るものだそうです。TEENSは、できるだけたくさんのプラスの体験を積んでもらう場所です。お薬だけで解決することはなく、あくまでもご本人の特性にあった関わり方、その他の環境調整を同時並行で行ってこそ、初めて効果が出るものだと思います。色々な事情でお薬を飲むという選択をしなかった(できなかった)お子さんに対してももちろん、TEENSでプラスの体験をできるだけ積んでほしいという気持ちは同じです。

以上、4回に渡ってこのブログでは、TEENSスタッフとしてお薬に対して考えていることを綴らせていただきました。今後も保護者の方やご本人と、お薬との向き合い方について一緒に考えていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

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