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『知って欲しい。発達障害児の二次障害② ~二次障害の種類と見極め~』

二次障害 2016年1月22日

TEENS新宿スタッフの金井です。前回のブログでは、発達障害*の二次障害が起きる仕組みについて改めて確認しました。

発達障害の二次障害には、たくさんの種類があります。誰が見てもはっきりと分かるものもあれば、医師でも診断がつけづらいケースまで、程度も色々、重なり具合も色々なのですが、ポイントは「毎日の生活に支障が出ているかどうか」です。安心して日常を送れないようになっていれば、それは二次障害として捉え、何らかの配慮や対処をすることが必要だと思います。今回はまず、主要な二次障害について挙げてみます。

不安障害

不安感自体は誰でも持つものですが、それが強いレベルで繰り返し起きたり、いつまでも続いたりするのがこの疾患です。多くは発汗や吐き気、頭痛などの身体症状を伴います。発達障害を抱えるお子さんでは、何度も失敗しているうちに「また何か間違ってしまったらどうしよう」「またみんなに馬鹿にされるのではないか」という考えが頭にこびりついて、人中に入ることを恐れるようになるケースが見られます。不安障害にはいくつかの種類があり、ふいに動悸やめまいに襲われるパニック障害もこの一種です。

気分障害(うつ病)

頭にもやがかかったようになり、判断が鈍くなる、疲れやすくなる、動きが遅くなるなどの変化が見られます。何事にも意欲が湧かず、これまで好きだったことにも興味を示さなくなります。食欲が落ち、夜もぐっすり眠れません。「自分はダメな子だ」「どうせ何をやっても上手くいかない」と自分を否定的に捉え、そこから抜け出せなくなります。お子さんによっては、気分の落ち込みを上手く言語化できないために、イライラ感や落ち着きのなさも症状の一つとして見られることがあります。躁とうつを繰り返すものは、気分障害の中でも双極性障害と呼ばれます。

強迫性障害

手が汚れている、忘れ物をしたなどの強迫的な観念にとらわれ、それを自分の中で解消しようとして、強迫的な行動(手洗いをし続ける、何度もカバンの中を確認するなど)を繰り返し行う疾患です。その行動をとることによって、一時的には不安な気持ちから離れることができます。自閉症のお子さんによく見られるこだわりや常同行動との違いは、その行動が「無意味だと気付いている」ことにあります。自分でもやめたいと思っているのにやめられないから余計に苦しいと言えます。ひどくなるとやがて疲れ果て、外出がままならなくなることもあります。

反抗挑戦性障害

自己肯定感が下がり続けた結果として、周囲の人の指示や提案に対し、ほとんどいつも怒りを伴った反発、拒否、無視などの態度をとるようになるものです。相手を苛立たせるような行動をわざととっているように見えるため、本来助けてくれるはずの大人を敵に回し、自ら関係を壊してしまうことになりますが、本人にもどうにも止められない状態です。さらに悪化すると、社会の規範やルールを頻繁に破ったり、他者に積極的な被害を与えたりする行為障害に移行する可能性もあります。

この他、トゥレット症候群(チック障害の一種)、摂食障害、身体表現性障害、選択性緘黙、自傷行為・・・など二次障害にはまだまだ色々なものがあります。安心して自分を出せる場所がなくなっていくことから不登校や引きこもり、家庭内暴力などの状態に陥ることもあり、これらも障害や疾患ではないですが、二次障害が行動に現れたものと言えます。つまり、二次障害は、心理的な問題、身体的な問題、行動上の問題など幅広い範囲に渡って起こり、それらが複雑に絡み合って状態像を形作っていることが分かります。

また、元々の発達障害の特性と後から起きた疾患の症状との区別が非常に難しいケースがあります。例えば、特定の音や感覚をひどく嫌うとか、どうしてもマイルールを実行しないと次の行動に移れないなどのこだわりが強い場合に、それは強迫性障害の症状と混同されやすくなります。その鑑別により対処方法は異なりますので、早目に専門医の意見を仰ぐことが求められます。

KaienのWebサイトにも「発達障害の二次障害」のページを設けてあります。大人の発達障害を想定していますが、よろしければそちらも参考にしていただければと思います。

さて、ここで押さえておきたいのは、発達障害のあるお子さんでも二次障害が必ず認められるわけではないことです。逆に、発達障害がなくても上記に紹介した疾患を抱えるお子さんもいます。たとえ二次障害が起きたとしても、お子さん本人の感受性やストレス耐性など他に多くの因子があるため、不適切な環境がすべての原因とも言い切れないでしょう。よって、二次障害に至った原因の特定もある程度必要ではありますが、ご本人が楽に生きやすくなるための方法を早く見出すことが我々支援者の最優先課題であると考えています。

最後に二次障害を別の視点から言いかえてみると、自分の心がこれ以上壊れないように、無意識的に脳が二次障害の状態(例えば、うつでは強制的に休養がとれるようにしていたり、強迫性障害では儀式的な行動によって一旦不安やストレスを棚上げできるようにしていたり)を作り出しているのかもしれません。抽象的な表現で恐縮ですが、人間が自分を守るためのメカニズムを持っているということは、そこから這い出て元気になるための正しい選択をとれば、それだって脳は応援してくれるはずです。

このシリーズ最終回である次回は、二次障害を防ぐためにできること、二次障害に立ち向かうとはどういうことかについてスタッフとしての経験を踏まえて書きたいと思います。

 

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

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