TEENS新宿スタッフの金井です。今や「二次障害」は、TEENSの保護者の方とお話していても、頻繁に出てくるワードとなっています。そこで、今回から3回シリーズで「発達障害*の二次障害」についてスタッフの立場から改めて考えていきたいと思います。
第2回 二次障害の種類と見極め
第3回 二次障害を防ぐことと立ち向かうこと
初回の今回は、まず二次障害が起きる仕組みについて確認していきます。発達障害の二次障害は、発達障害に対する周囲の不適切な対応が続いたことにより、二次的に別の障害や症状が現れてしまうこと、その状態を言います。不適切な対応とは例えば、学習障害*のお子さんが、真面目に学習に取り組んでいるのに大人から「手を抜いている」とか「やる気がない」と判断されてしまったり、ADHDのお子さんが、落ち着きのない態度や不注意から来る失敗を繰り返していることに対し「騒がしくて迷惑な子」と見られてしまったり、ASDのお子さんが、相手の意図を理解できずにズレた返答ばかりして「つまらないから友達になりたくない」「性格が悪い」とグループからはじかれてしまったり・・・。こういうことが起きがちなのは、外から見ても分からない、気付かれにくい障害であることも関係しています。
もちろん本人には悪気はなく、生まれ持っての特性がそうさせているのですが、世の中の全ての人がその知識や理解を持って関わってくれるということはまだまだなかなか期待できず、発達障害のあるお子さんはどうしても他者から怒られたり、注意を受けたり、排除されたりというマイナスの体験を積み重ねていくことになります。逆に、達成感や充実感を感じるという体験や周囲の人から褒められたり、認められたりする体験は少ないままに自我を確立する思春期を迎えざるを得ません。一見、平気な顔をしているお子さんも多いので、大して落ち込んでいないだろうと周りは思いがちですが、勉強自体を放棄してしまったり、友達が欲しいなんて考えないようにしたり、家に帰って親御さんにだけイライラをぶつけたりと、TEENSでも人知れず深い絶望感の中に投げ込まれているお子さんは少なくないという印象を持っています。
そのようなストレスフルな状況がもし長く続いてしまうとしたら、どんな人だって前向きな気持ちを維持することは難しく、否定的な自己像に支配され、メンタル的な問題が引き起こされていくのは容易に想像できます。「どうして自分ばっかり怒られるのか」「自分はダメな子なんだ」と徐々に周囲に対して心を閉ざしていき、頑張る気持ちが失われてしまいます。何事にも自信が持てなくなり、新しいことにチャレンジしたくなくなるどころか、毎日の生活にも後ろ向きになり、色々な面で支障が出始めます。時には、周囲に対して自分を守るための拒否的、反抗的な態度をとるようになって、さらに関係性がこじれるケースもめずらしくはありません。ただそれは、「これ以上僕(私)を傷つけないで!」という叫びに他ならないのです。
TEENSのスタッフになって、発達障害のあるお子さんとお付き合いするということは、発達障害の周辺にある二次障害も含めて本人を理解することであり、さらには、発達障害を抱えながら生きる困難に共に挑んでいく役割を担うことなのだと考えるようになりました。シリーズ最終回のブログで二次障害を防ぐためにできること、二次障害への対応の仕方について考える前に、次回の第2回ブログでは、二次障害の具体的な状態像(不安障害、強迫性障害、うつ、反抗挑戦性障害など)を押さえておきたいと思います。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます
*学習障害は現在、DSM-5では限局性学習症/Specific Learning Disability、ICD-11では発達性学習症/Developmental Learning Disorderと言われます