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発達障害のあるお子様向け キャリアデザイン教育
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『知って欲しい。発達障害児の二次障害③  ~二次障害を防ぐことと立ち向かうこと~』

二次障害 2016年2月1日

TEENS新宿スタッフの金井です。前2回のブログで、発達障害*の二次障害について整理してきました。このシリーズ最終回の今回は、「二次障害を防ぐ」と「二次障害に立ち向かう」という二つの視点に分け、それぞれTEENSスタッフとして日頃感じていることを書かせていただきます。

二次障害を防ぐ

どの本にも、どのサイトにも書いてあり、当たり前すぎて恐縮ですが、二次障害を防ぐには早期発見・早期対応が何より重要です。お子さんが周囲の無理解に苦しんでいないか、自己肯定感が低下していないか、声にならない叫びを周囲が早くキャッチしてあげることが求められます。

以前、お子さんがクラスで嫌がらせを受けていることにご家族がいち早く気づき、すぐに学校や他の保護者の協力を仰いでいじめの空気を断ち切ったというケースがありました。また、担任の先生にお子さんの障害特性やして欲しい配慮を伝え、クラスメイトの対本人への関わり方に介入してもらったり、スクールカウンセラーによる定期的な相談の場を設けてもらったりしながら、安心して学校生活を送れるようになったお子さんもいます。

その前に、通常学級でいくのか、特別支援級や通級などサポート教育を利用するのか、あるいは私立学校を選ぶのかという大きな問題がありますが、それはお住まいの地域の受け入れ態勢、お子さんの困り具合や納得感、教師やクラスメイトとの相性など様々な条件によって状況は変わってくるので、一概には「こうだったらこっち」と言うことはできません。お子さん毎に慎重に判断していくことになりますが、その判断基準が学習の進度やレベル、受験の有利不利だけに偏ることのないように留意する必要があります。

さて、二次障害を防ぐには、環境調整だけでなく、本人の側にアプローチするという考え方があります。

まず一つは、本人の受け止め方を変えることです。以前、私が勤めていた医療機関では、二次障害の症状がひどく、それで初めて精神科を受診し、生育歴を聞き取る中で実は元から発達障害を抱えていたのではと判明する大人の患者さんに何度も出会いました。つまり、二次障害が先に見つかるというケースなのですが、どれだけそれまで正体の分からないものと戦って傷ついてきたのか、どれだけ自分を責め自信を失ってきたのか想像を絶するものがありました。

これに関して、「だから二次障害を防ぐためには、診断の告知をできるだけ早く」というような乱暴なことを書くつもりはありません。ただ、年齢がいってから、「診断名を聞いてほっとした」「自分の努力が足りなかったからではないんだ」「もっと早く分かっていたらこんなに苦しまなくて済んだのに」という思いを抱く人は少なくないようです。TEENSでも、「悩んできたのは自分だけではない、自分と似た感覚の人がたくさんいると分かって楽になった」というお子さんもいます。自分の中で失敗や傷つき体験の説明がつくこと、対処の仕方次第でもう少し生きやすくなると知ることは発達障害のある人にとって人生の早い時期で必要なことです。

また、本人自身の問題解決能力を高めるという視点もあります。親であっても支援者であっても24時間、本人について回り、二次障害につながりそうな障壁や周囲の無理解を全てはねのけてやることは残念ながらできません。お子さんが大きくなるにつれて親がかりではなくなっていくものなので、将来的にはもっと無理です。従って、「何かあったらいつでも相談できる」という関係性をどれだけ早く築いておくかということがポイントだと思います。その「何かあったら・・・」が前もってイメージできない、判断できないのが発達障害のあるお子さんですので、SOSを出すこと、相談することの大切さ、その具体的な言葉やタイミングをピンチに備えて教えておかなくてはならず、その実践練習の場としてTEENSがあると言っても過言ではありません。

良い相談関係を築くためには、当然支援者にも心構えが必要です。例えば、「今日も保健室に行ったの?」と言うか、「自分から保健室に行けるようになったの、すごいじゃない」と言うのとではお子さんに伝わるメッセージは全く違います。たとえ他のお子さんよりも結果的に要領よくできないことがあっても、「いつの間にか、言われなくても自分から〇〇しようとするようになったのね」と小さなステップでも喜んであげられる大人が近くにいることが、お子さんの相談力を伸ばすことにつながります。また、上手くいかないことばかりが続いても、「あなたが努力していることを私は知っている」「あなたのその頑張りは、将来社会に出た時にあなたの強みになる」とそっと教えてあげることだけでも彼らの二次障害をはねのける力になると考えています。

二次障害に立ち向かう

二次障害と認められる状態になり、生活に支障が出始めた場合、治療には時間がかかりますが、対処は可能です。まず第一に、本人の苦しさが特に強い場合は、躊躇せずに服薬や心理療法を検討し、医療や専門機関を訪ねることも選択肢に入れておかねばならないでしょう。

一方、普段の支援では、そのお子さんにとってどの刺激が負担になってこの反応になったのだろう、今この行動を避けているのは何が不安だからだろうか・・・と立ち止まって考えることには意味があるだろうと考えています。もちろん、症状や問題行動が何かしらの背景があって起きているからといって、「確かにこれが原因に違いない」と周囲が勝手に決めつけることにはリスクはありますし、特にお子さんの生活全てを見ている訳ではない支援者が理由を突き止めるなど、そのお子さんに対しておこがましい行為であると感じる時もあります。ただ、自分の気持ちを言語化することが苦手なお子さんほど、周囲の観察眼が物を言うと思います。

勉強を教える時の距離感を変えたり、注意の仕方を変えたりしたことで、驚くほど症状や逸脱行為が減ったということもありました。また、学校や他の塾では緊張が強くて集団に全く入れないとか、口答えやルール違反が多すぎるために居場所を失ってきたなどの事前情報があるお子さんには、TEENS入所時から本人が安心できるための雰囲気づくり、良いところをみつけて褒めることなどに細心の配慮を続け、「ここでなら頑張れる」と落ち着いてくれたお子さんが何人もいました。

もちろん、我々がお子さんの二次障害に立ち向かうことは、本人のあるがまますべてを受け入れる、許すこととイコールではありません。お子さんにやめて欲しいこと、直したほうがいいことは率直に伝えつつも、「TEENSでは努力してみようかな」「この人の言うことなら耳を傾けてもいい」という関係の素地を作っていくべきで、手腕を試されているのです。

二次障害は、本人にとって生き抜くために必要だからこそ学習されてきた行動様式(または症状)であることが多いので、それを手離すことは大変なことです。受け入れる時と叱る時のメリハリをつけること、他の代替行動を見つけてあげること、行動を変えるべき理由を明確に説明することなど、本人が二次障害を安心して手離せるような環境を整えてあげることが支援者の大きな役割だと考えられます。

また、ここまで書いてきたことと矛盾するようですが、二次障害を警戒しすぎて、いわゆる「純粋培養」にならないような意識も持っておきたいところです。二次障害をできるだけ防ぎたいのは当然ですが、誤解を恐れずに言えば、ものすごい量の情報が飛び交って、色々なタイプの人間がぶつかり合いながら暮らしている社会に生きている限り、二次障害をゼロにすることは不可能と考えることもできるのです。必要以上に傷つかない打たれ強さや危険を回避できる能力を身に付け、自身の特性を理解してもらえない場所ではどう振る舞えば良いか、理解してくれない相手にどう自分を表現すれば良いか、を学んでいくことがどうしても必要です。信頼できる人との出会いや小さな成功体験を積み重ねていくことを通して、できなかったことができるようになったり、避けていたことにもチャレンジできるようになったり、何度も脱皮をしながら人間的成長を繰り返していくことこそがそのお子さんの人生であり、そこにスタッフとしてじっと見守りつつ関わっていきたいのです。

長くなりましたが、最後にまとめるとすると、二次障害を防ぐにも、二次障害に立ち向かうにも、最重要課題はお子さんの特性を理解して寄り添うことのできる応援団を増やすことです。親のみが抱え込まなくていいように、学校、コミュニティ、相談支援事業所、他の療育機関、医療などの支援のネットワーク全体で支え合う体制をいかに作っていくかだと思います。TEENSでは、他機関連携を支援に活かしていくのはまだまだこれからですが、徐々に体制作りが整ってきています。

発達障害の二次障害を乗り越えることは、本人にとっても周囲の人にとってもしんどい過程ではありますが、お子さんたちに良い変化が起き、きらきらした表情を見た時の「向き合ってきて良かった」という気持ちを忘れずにこれからも歩みを続けていきたいと思います。

 

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

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