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発達障害のあるお子様向け キャリアデザイン教育
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発達障害児の二次障害を服薬で防ぐという考え方

2015年6月19日

TEENS新宿スタッフの金井です。

前2回のブログで、お薬の効く仕組みや効果の実際、副作用について、改めて確認させていただきました。では、つまるところお薬は飲んだほうがいいのでしょうか。今回のお話のポイントは、「二次障害を防ぐ」「依存性の捉え方」の2点です。

服薬を検討するような状態で一番つらいのはご本人です。本人にとって楽になれる道を一緒に考えてあげることが、家族や医師やその他の支援者の役割だと思います。発達障害児はその特性、不注意や落ち着きのなさ、あるいは空気を読めない言動などのために、大人から叱責されたり、友達関係でトラブルになってしまったり、勉強に集中できずに学力が低下してしまったりということが起きやすく、自分は「どうせダメな子なんだ」と自信を失ってしまう傾向にあります。

ご本人にとって苦しい状態が長く続けば、発達障害*とは別の問題(二次障害)を併発してしまう恐れがあります。具体的には、ストレスで気分が落ち込み、生活全般への意欲が下がってしまう、あきらめの気持ちが強くなり、何事にも反発しがちになるということがあります。TEENSで出会うお子さんを見ていても強く思うことですが、発達障害と二次障害が重複すると、何が本人を苦しめているのか見極めることが難しくなり、年齢と共に問題も対応も複雑化します。よって、できるだけ早い段階で二次障害を防ぐべきと考えます。その重要な選択肢の一つとして登場するのがお薬です。

しかし、そこで気になってくるのが、小さいうちからお薬を飲ませて「依存」になってしまうことはないのかという点だと思います。一般的に、精神科で処方されるお薬は依存性がゼロということはありません。人間の身体には、それまでと同じ量では同じ効果が得られなくなる「耐性」が存在するからであり、より多くの量を欲するようになるそうです。

ただ、お子さんに出されるお薬の場合は、依存が発現しづらくなるように配合し、十分に安全性を確かめた上で処方が認められたお薬、かつ前回のブログにも書きましたように慎重に服薬量を調整します。一日に飲んで良い量も決められています。お薬によっては、休薬日を儲けるなどの工夫もされます。今服用しているお子さんも、主治医から「一度飲み始めたら一生服用する覚悟で」と言われて飲んでいるお子さんはいないと思います。よって、医師の指示通り服薬していれば心配しすぎる必要はないと言えるのではないでしょうか。

コンサータは一般的に、その薬の作用の仕方の特徴から依存性が強いと言われています。身体依存(薬をやめた後のイライラや震えなどの離脱症状)はないですが、精神依存が出る場合があるようです。つまり、「まだこの薬を手放したくない」「薬がないと生活していくのが怖い」という気持ちが強く出ることがあるようです。お薬を止めた後、精神依存は徐々に消失していくと聞きますが、お薬をいつまで飲み続けるべきかという問題は残ります。

発達障害児に出されるお薬は、「しんどい今、一時的に助けを借りて、必要なくなったらやめれば良い」という見通しで処方されます。気分が穏やかになったり、集中しやすくなったりすることにより、服薬前より頑張れる→評価される→もっと頑張れるという良いスパイラルが生まれ、自尊心の低下を食い止めて自信を取り戻すことができます。それによって、「自分はこのお薬の助けを借りなくても大丈夫かな」「そろそろ卒業してもいい」とご本人が思える時期が来たら、そこがお薬の最高の止め時なのかもしれません。

今回がこの「発達障害児のお薬シリーズ」ブログの最終回となる予定でしたが、ついつい書きたいことが溢れてしまい、長くなってしまいました。もう少し、TEENSに通うお子さんとスタッフとの実際のやりとりについてお伝えしたいので、そちらは次回に回させていただきます。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

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