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発達障害のあるお子様向け キャリアデザイン教育
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放課後等デイサービス卒業生調査を公開 | TEENS OB・OGのアンケート結果から

TEENS代表ブログ 2020年12月30日

TEENSの飯島です。年の瀬ですね。

今回は「放デイを利用した子どもたちの卒業後の実態」について調査した結果を公開します。

7年前に始まった放デイTEENS…高校3年生まで利用した卒業生は240名にのぼります。社会に羽ばたいていった先輩たちの現在についてお答えいただきました。

卒業生の進路は?- 進学が半分、1/4が就職、1/4が就労準備

こちら大変残念なことに過去のデータはきれいには揃っていないため昨年度分を掲載します。

ここから、”発達障害*の子だからこういう進路”と決まったレールがあるわけではなく、いかなる可能性もあること。目指す方向に必ずロールモデルがいることがわかります。

就職までのステップは?-約半数は就労移行支援などの就労準備のための機関を利用
  • TEENS卒業生で就職をした人の約半数は就労移行支援などの就労準備のための機関を利用
  • TEENS卒業後、大学・専門学校に進学した人の中でも半数以上は就労移行支援などの就労準備のための機関を利用

就職訓練や就活サポートをしてくれる『就労移行支援』を始めとした、就労準備のための機関を活用して就労に至る方と、そうでない方は同じくらいいるようです。

大学・専門学校などの進学→就労準備→就労という3ステップで社会に羽ばたいていく方も多いです。

なお、TEENS生で大学・専門学校に進学する場合は、当社が行っている「ガクプロ」という発達障害・グレーゾーンの学生向けプログラムに参加される方がほとんどです。就学支援を受けながら、最終学年になった際に就活のサポートを受けるイメージですね。

参考 | 学生向けプログラム ガクプロ

就職事情は?- 95%が一般就労、職種は多様

卒業後、半分程度が就職、1/4程度が就労準備、残り1/4が就労にすすむTEENS卒業生。

では、過去7年間の卒業生の中で、就職に至った方々の就職事情についてみていきます。

  • 雇用形態

ほとんどが一般就労で、全体の70%ちかくの人が配慮を受けながら働く環境を選んでいます。

(なお、一般就労、障害者枠、一般枠、就労継続支援事業など…基本的な用語について知りたい!という方は「TEENS ゼロから学べる 発達障害子育て応援セミナー」にご参加ください。毎週木曜日30分間のライトなセミナーです)

  • 職種

こちらは母数がまだ多くないこともありばらけています。まだひとりひとりの顔を思い浮かべられるくらいの人数なので「自分にあった進路を選んだなあ」という感想をもちました。

  • 給与(生活費)
月給平均 153,136円
年間賞与平均 238,238円
年収平均 2,065,045円

ほとんどの方がご家族と同居 + 4割の人は障害年金を受けながら生活しています。

  • 就労先の満足度

満足度は5段階中4.4と非常に高くなっております。コメントは以下の通りです。

無理なく続けられる勤務形態、能力の発揮できる勤務内容のため満足度は高いです。

息子の専門性を活かせる職場です。

特性に合った職務で、大手なので安定している

独り暮らしを見越しての自立型のアパート型GHに入居中で週30時間の勤務で時間・体力に余裕がある。彼に合わせた仕事内容設定をしてくれる。パートではあるが早々に無期雇用にしてくれた。この1年間転職活動し、最終選考にもいったところもあったが、やはり今の職場が一番合っていると本人が感じた。

障碍者枠で就職し皆さんにサポートして頂いていること感謝しているが、月に1、2回体調不良にて休み年休消化させてもらっている。体調管理が課題です。

一般枠、障害枠問わず、特性への理解があること、職務内容がフィットしていること、体力的に余裕があることがポイントとなるようです。

  • 生活の安定度・自立度&幸福度は?

安定度・自立度

不調をきたしている方は少数派でしたが、特に食事、身の回りの整理整頓にサポートが必要な方が多いようです。

現在の生活の幸福度

7割を超える方が幸福だと回答。5段階評価中3.8という数字がでています。

こちらは今後比較対象を設定しながら分析していかれればと思います。

まとめ | 発達障害の子に本当に必要なサポートを考える

まとめると…

  • TEENS卒業後どこにも所属していないOG、OBはほとんどおらず、多くが就学または就労、就労準備をしている
  • 半数は就労準備のための機関を利用している
  • 給与は障害年金がとれれば自活できる水準である
  • 多くの場合は家族と同居をしている

これを見たときに、「”はたらく力”を育む」を標榜しているTEENSとして、利用者の半数が就労移行や生活訓練などの就労準備のための機関を利用することはどうなのか?というのは考えさせられました。

参考 | 発達障害向け就労サポート 就労移行支援・生活訓練

学校卒業後、スムーズに就労に移行できるのに越したことはないでしょう。しっかりとした就労準備性が備わった上での就職であれば、働いている期間が長くなれば生涯年収も高くなりまし、福祉施設に投下されている税金を減らすこともできます。

一方で…発達障害の子どもたちが学校生活を送りながら就労準備性も高めていくというのは、現実的にはなかなか酷だと感じます。

そもそも色々な面で少数派な彼らが、定型発達向けに作られた学校社会の中で日々を暮らすだけでも精いっぱいな子は多いです。更に、社会にでてから必要なスキルを、定型発達の子どもたちは無意識的にでも日常生活の中で獲得していきますが、発達障害の子どもたちにとっては特性上それがとても難しいです。

そのため、発達障害のある青年たちが学校卒業後就労準備のための機関を経てスキルと心構えを手に入れてから社会にでていくのは決して悪いことではないと思います。

重要なのは、その段階に至ったときに「自分のペース、自分にあうやり方で自立に向けて準備していこう」と考えられるための自尊心、自己理解を養っておくことではないでしょうか。

TEENSとしては現在平日の「個別セッション」でかか自己理解を深めたり自己決定をするためのサポートを行い、休日の「お仕事体験」では職業を試着して自分にあう仕事を探すための体験機会を設けています。

これらのサポートを今お届けできているのは600人ほど…TEENSの利用待機者は全体で1000人以上おり、全国にグレーゾーンを含めた発達障害の子どもたちが75万人ほどいることを考えると、ほんとうにごくごく一部にしかサービスを提供できていないことを痛感しています。

そんなわけで、来年は現在放デイ内でのみ行っているオンラインの支援をTEENS生以外にもご利用いただけるよう検討しています。また詳細が決まりましたらお知らせしますね。

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比較もないので未熟な分析ですが…これから毎年調査を重ねながら、発達障害の子の将来から逆算した支援とはなんなのか、引き続き考えていきたいと思います。

今年も1年お世話になりました!来年もよろしくお願いします。

打ち出の小槌を振る牛のイラスト(丑年)

 

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

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