保護者・Aさんプロフィール
Aさんのお子さんは、書字や発音の困難、不注意による忘れ物に課題がある一方、数学・PC・ロボット製作に強みを発揮し、興味ある分野では豊かなアイデアを伸ばしています。その強みを生かすために、理工系高校への進学を選択しました。
理工系高校と一口に言っても、実はいくつか種類があります。ここでは代表的な「進学校の理数科」「高専(高等専門学校)」「工業高校(工科高校)」の特徴を整理してみましょう。
進学校の理数科
偏差値が比較的高く、大学進学を前提にしたカリキュラムが組まれています。理系の大学や医学部、工学部などへの進学実績が豊富で、国公立や難関大学を目指す生徒が多いのが特徴です。学習内容も実践的で、進学志向の強い生徒に向いています。
高専(高等専門学校)
5年制の学校で、3年制の高校より2年間長く在籍します。専門技術をじっくり学べるのが魅力で、情報系・機械系・土木系など幅広い分野があります。卒業後はそのまま就職もできますし、大学3年次に編入してさらに学びを深める道もあります。かつては就職が多いと言われましたが、現在は6割ほどが進学を選ぶようになっています。
工業高校・工科高校
工業高校や工科高校は、就職に直結する実践的な技能習得を重視しています。情報系・機械系・建築系などの分野で、実習が多く手を動かして学ぶスタイルです。指定企業からの求人も豊富で、就職に強いのが大きな特徴。ただし近年は進学希望者も増えてきています。
理工系高校は興味・関心を伸ばせる一方で、学習面はかなりハードになることがあります。もし留年や中退が見えてきたときには、早めに「プランB」を考えることも大切です。
モーリヤ君:どうして理工系の高校を選ばれたのか、きっかけを教えていただけますか。
Aさん:小学校の頃から数学が大好きで、問題を解くと時間を忘れるほど集中していました。計算も得意でしたね。それにロボコンなどをテレビで見て興味を持ち、ロボット教室にも通いました。書くことが苦手だったので早めにパソコンを覚えさせたら、それもすぐに習得して…。本人も強い希望を持っていましたし、ワークショップにも参加して、とても楽しそうだったので進学を決めました。
モーリヤ君:算数・数学に特に興味があったんですね。
Aさん:そうです。ただ、思い込みでミスすることも多く、細かいチェックを省いてしまう癖は残っています。でも文章題を読む力はありました。
モーリヤ君:理科の分野にも関心があったのですか?
Aさん:はい。生物や物理も好きでした。逆に国語は小説の心情理解が苦手。でも本を読むこと自体は好きで、社会は今でも得意科目です。
モーリヤ君:書字が苦手と伺いましたが、ロボット製作などの細かい作業はどうでしたか。
Aさん:説明や図を見ればすぐに同じものを作れるのが得意でした。ただ不器用さがあって壊れやすいロボットになったりはします。でもアイデアは豊富で、パーツを組み合わせて工夫するのは得意でした。
モーリヤ君:情報を読み取って組み合わせたり発想する力が強いんですね。
モーリヤ君:高校受験のとき、合理的配慮は申請されましたか?
”※合理的配慮とは?:合理的配慮とは、日常生活での困り感のある人たちの要望を受けて、社会の中にあるバリアをとりのぞくことをいいます。詳細はこちら”
Aさん:はい。第一志望はマークシート方式で、試したところ息子には問題なかったので申請はせず、通常の形式で受験しました。ただ、面接では発音が聞き取りにくいことがあり、聞き返してほしいとお願いしました。
モーリヤ君:なるほど。他の併願校ではどうでしたか?
Aさん:診断書と学校の意見書を添えて申請しました。でも結果は「不受理」。理由の説明もなく、代替案もなく、直前に「認められません」とだけ通知が来たんです。すごく戸惑いました。
モーリヤ君:それは大変でしたね。提出までの準備も相当ご苦労があったのでは?
Aさん:はい。診断書を出すにも病院の予約が必要で、発行まで時間がかかりました。意見書も学校に依頼しなければならず、本当に早めの準備が大切だと痛感しました。
モーリヤ君:当日の試験でも困ることがあったと聞きました。
Aさん:はい。面接票を手書きで書かされて、字を書くのが苦手な子にとってはかなり負担でした。事前に相談していれば、印字や代替の方法もあったのかもしれません。それから、問題を見てマークシートだと思い込んでいたんですが、実際は記述式で、そこで時間を取られてしまって…。想定外のことが多かったです。
モーリヤ君:なるほど。やはり保護者が早めに動いて情報を集めることが大事ですね。
Aさん:本当にそう思います。申請しても必ず通るとは限らないし、準備不足で当日慌てることもあります。今回の経験を通じて、もっと早くから確認していればと強く感じました。
モーリヤ君:受験の配慮申請が不受理となった場合、学校から代替案などは提示されましたか?
Aさん:いいえ。直前に「審査の結果、認められませんでした」と通知が届いただけでした。説明が必要な場合は連絡してくださいと案内はありましたが、結果が覆る雰囲気ではなかったです。
モーリヤ君:前相談では良い感触もあったと聞きました。
Aさん:はい。「それぐらいなら対応できそうです」と口約束はあったんです。でも最終的にはダメで、それ以上は求めませんでした。実績もなかったので強く言えなかったというのもあります。
モーリヤ君:なるほど。配慮が通らなかった場合、受けるか受けないかを判断するのも選択肢になりますね。
Aさん:そう思います。もし本当に親切な学校なら代替策を出してくれるかもしれませんが、基本的には「不受理」で終わりです。期待しすぎると辛いので、事前にその可能性も想定しておく必要があると感じました。
モーリヤ君:進路選びについて一言いただけますか?
Aさん:はい。理工系の高校は課題量も多くスケジュールもタイトで大変ですが、専門科目など本人の「好き」を活かせる部分も多く、楽しみながら成長できると思います。
モーリヤ君:なるほど、好きなことがモチベーションになるんですね。
Aさん:そうです。もちろん簡単な道ではありません。合格点も高く、つまづくこともあります。留年やプランBの準備も頭に入れつつ、本人の希望や興味を大切に進路を選ぶことが大事だと思います。親としてもサポート体制や選択肢を考えておく必要があります。
モーリヤ君:なるほど。本人の意欲と保護者のサポートの両方が大事なんですね。
Aさん:はい。その上で、本人の「やりたい」を中心に据えて進路を選んでほしいです。
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ティーンズスタッフからのコメント
理工系高校は学習がハードですが、専門科目や実習で本人の「好き」を活かせる環境があります。
Aさんのお子さんも幼少期から数学やロボット工作に興味があり進学を決めました。受験時は合理的配慮の申請も試みましたが、不受理となることもあり準備の重要性を実感。合理的配慮申請は早めの準備が大事になります。高校でもご自身に合ったサポートを受けることで充実した学校生活を送られているようです。
本人の意欲と保護者の支援が両立することで、充実した学びと安心できる進路選択が可能になります。