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発達障害のあるお子様向け キャリアデザイン教育
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神奈川県横浜市 「星槎中学校・星槎高等学校」| 発達障害に理解のある学校 インタビュー特集 vol.003

体験入学からより良い時間を過ごしてもらえるように 事前の”面談”を実施

 入学試験についてお聞かせいただけますか?

蓮田先生 星槎中学校は小1~小6の内容の学科試験があります。あとは、体験入学の際に面談も行っています。

入学前から面談を通してお子さんの特性を知ることで、その子に応じた対応を考え、体験入学をより良い時間を過ごしていただこうと考えています。そこであらかじめ入学前に学校の雰囲気をしって、ここなら通えそうと思ってもらうことが大事なんです。

 では、合否の振り分けというのはこの学校で生活していけるか、というところがポイントですか?

蓮田先生 そうですね。学科の試験も行いますが、足切りが目的ではなく入学後のクラス編成の参考にするためですね。クラスに2名教員はいますが、この規模になってくると、場面で個別に声をかける支援はあっても、常時マンツーマンでの対応はできませんから ”責任をもって”お断りするケースもあります。 学びのサポートがしきれない子を受け入れるのは、無責任なので。

 TEENSに通われている方でも、星槎中学校・星槎高等学校に入学したい、そのために勉強を頑張らなきゃ、という子がいますが…

蓮田先生 あー、頑張っちゃいますか。本当は頑張りすぎないで欲しいですね。頑張りすぎちゃうと、その子の本来の実力がわかりませんから。だから過去問とかもありません。ありのままを知りたいんです。それに、頑張って入ったところで入学後にしんどくなっちゃうのも困りますから。

本人の能力と意欲のちょうどいいところぐらいで、モチベーションを保てるくらいの力の入れ方で準備してほしいです。少し背伸びしたらできる、くらいのところがこの学校であるなら、ぜひ選んでいただけたらと思います。

 では、星槎高等学校の受験についてもありのままの状態で受験してほしい、という感じでしょうか?

蓮田先生 はい。受験相談というのを必ずお受けいただくんですが、その時にWISC-Ⅲ又はⅣの検査結果をできる限りご持参いただくようにしていて。どんな特性の子で、この学校で充実した3年間を過ごせすためにはどんなサポートが必要かな?というのを事前に確認させていただきます。一般入試では国語・数学・英語の学科試験がありますが、それも無理に頑張らずに、その時のその子の理解度を見せてもらえるといいと思います。

「人を認める・人を排除しない・仲間を作る」を実践する実直な生徒たち

系列校の星槎国際高等学校スポーツ専攻で2020年のオリンピックを目指している生徒たちの寄せ書きも

 今までたくさんの生徒さんと接してこられたと思いますが、特に印象に残っているエピソードなどありますか?

蓮田先生 そうだなあ…たくさんあるな(笑)特定の誰かというわけではないのですが、ここに通う生徒たちの傾向についてお話ししますね。

たとえば学校に通えていなかった子もここなら通えちゃうんですね。やっぱり体験入学のときに学校の雰囲気がわかっているのが大きいんじゃないかと思います。ここなら大丈夫、っていう安心感があるんでしょうね。始めのころは親御さんの送り迎えで登校している子も、ゴールデンウイークあたりからは一人で通えるようになるんです。むしろ、恥ずかしいからもう来ないで、って。安心できる居場所として認識できたからでしょうか。今までの少し寂し気な印象が嘘みたいに、自主性が生まれてくるんです。

それから、星槎の3つの約束をすごく大事にしてくれている子が。「人を認める・人を排除しない・仲間を作る」この3つです。入試倍率が上がってきたということもあってか、入学前からみんな星槎のことを気に入ってくれていて、この精神が身についている。だから外見や特性などで相手をからかったりするような子はいないんです。

ただし、生徒同士のトラブルはどうしても起こりますよね。そんなときは、その場をSSTの練習の場にしてしまいます。「今どういう伝え方だった?」とか「急に声かけたからびっくりしたんじゃないの?」「じゃあもう一回やってごらん」とか。休み時間などは先生たちが積極的に介入するようにしています。通常、授業以外の時間は職員室に行ってしまって、先生の見ていないところでいじめとかトラブルが起こってしまうと思うのですが、本校ではそういうことはないですね。いつでもすぐに教員たちがアプローチできるような体制をとっています。

 先ほどの座席の話もありますけれど、先生たちによる丁寧な事前の介入があって安心できる空間が実現されているんですね。

蓮田先生 そうですね。一方で、私たちができる支援っていうのはすべて「想定内」のものだと思うんです。

 想定内?

蓮田先生 はい。私たちの介入によって子どもたちが深く傷つくようなトラブルは回避できていますが、実際に彼らを成長させるのは生徒同士の想定外のやりとりなんですよね。そういうのを通じて子どもたちはぐんと伸びていく。私たちは環境を作る、生徒同士の化学反応によって、変わっていく。これが理想の形だと思っています。

 なるほど…私も日々、私は今まで支援目標と関係ないところでお子さんの成長がみられたとき、「子どもは勝手に成長するんだなぁ」と思っていました。でも、それは支援と全く別物ということでもなく、そういった成長に繋がるまでの土台や環境づくりがあってこそなんですね。

蓮田先生 そういうことです。そしてできればそれを社会にも広めていきたい。彼らは普通と違うわけじゃない。ほんの少しのサポートがあれば、自分の力を発揮することができる。それがないから、できないという風に見られてしまっている。この学校で行われていることが、どこでも当たり前のようにできるようになれば、多様な人々が活躍できるようになると思っています。

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