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【図表でわかる!】発達障害 × 合理的配慮 |「タブレットの利用はズルい」? 合理的配慮を”不平等”だと感じる人へ

“発達障害*”にまつわる情報を3分程度で読める文章と1枚の図表にまとめてお届けします。

今回は「発達障害 × 合理的配慮の考え方」についてご紹介します。

図表でわかる!発達障害シリーズ一覧

●合理的配慮とは
 合理的配慮とは、ハンディキャップのある人たちの要望を受けて、社会の中にあるバリアをとりのぞくことを言います。
 一人一人の困り感は違うのだから個人個人に「自分はこれが苦手なのでこう配慮してほしい」という発信をしてもらい、それに対して各機関が対応できるかを考えましょう、という概念です。
 ただし、自分からニーズを伝えたとしても、すべてが受け入れられるわけではありません。例えば、受け入れ側が、経済的に負担があまりにも重たい、支援者の配置がどう頑張ってもできない、などの「過重な負担」がない限りにおいて、配慮が認められるということになっています。

▶参考 セルフアドボカシーと合理的配慮

「タブレットの利用はズルい」? 合理的配慮を”不平等”だと感じる理由

合理的配慮という考え方は、日本では2016年4月に「障害者差別解消法」が施行されたことにより急速に広まりました。

しかし、今でも「合理的配慮は不平等である」と考える人は残念ながらたくさんいます。そして、学校の先生だったり職場の上司だったり…本来であれば合理的配慮について相談したい相手が、そういった考えであるという状況も往々にしてあるでしょう。

例えば、ディスレクシア(読み書き障害)のある子のためのタブレット使用について。現在、たくさんの活用事例が報告されている一方で、「●●さんだけ特別扱いはできない」「他の子に対して不公平になる」といった理由をあげながら学校での使用が認められない例も少なくありません。

では、なぜこのような解釈のズレが生じるのでしょうか?その理由のひとつに、合理的配慮を行うことで「結果が左右される」 = 「有利な状態になる」、という誤解が生じていることがあげられるでしょう。

もちろん、理解があっても人手や予算の問題でがうまくいかない例も多々あるとは思いますが、今回は合理的配慮への誤解をどのように解消するか、に焦点をあてて考えていきたいと思います。

合理的配慮とは 「結果が左右される」 ≠ 「有利な状態になる」

結論から言うと、適切な合理的配慮により結果に変化はありますが、有利な状態になる、ということはありません。

合理的配慮とは、同じ土俵でチャレンジするためのサポートの形であり、えこひいきをしたりルールを変えることが趣旨ではありません。

例えば「野球の試合を観て感想を言いましょう」という課題がでたとします。この時試されるのは「試合状況を把握した上で自分の考えを示せるか」ということです。

そんな中、身長の関係で試合を観ることができない子がいたとしましょう。その子が感想を言えなかった時に「この子は試合状況を把握したり、自分の考えたことを示せない」と評価してしまってよいでしょうか?

この子ができなかったのはあくまで試合を観ることだけで、課題で評価したいことの本質とは何ら関係がありません。そのため、きっとこの課題をだした先生も「台に乗って試合を観られるようにしましょう」と伝えるのではないでしょうか。

発達障害の子どもたちへの合理的配慮も、これと全く同じことが言えます。

例えば、ディスレクシア(読み書き障害)の子に対して、「試合を観て感想を書きましょう」という課題がでたとします。ここでも試したいのは、変わらず「試合状況を把握した上で自分の考えを示せるか」ということです。

このディスレクシアの子は、試合自体を観ることも感想を話すこともできるかもできます。しかし、文字を書く、ということができないばかりに課題をこなせなかったとしたら、「この子は試合状況を把握したり、自分の考えたことを示せない」と評価することが妥当でしょうか?

この時に、「文字は書けないからパソコンを使って感想をタイピングします」と言ったとします。これは決して本人の能力が底上げされるわけでも、えこひいきしているわけでもなく、むしろ本来試したい実力を発揮するための手立てだということはご理解いただけると思います。

発達障害の子どもたちの社会的障壁を視覚化する

発達障害の子どもたちの社会的障壁と、それに対する合理的配慮を視覚化すると以下のようになります。

※こちらの図表はIISC(interactioninstitute.org / madewithangus.com)のイラストを参考に作成しています。

身長とは異なり、発達障害の子は脳機能に違いから困り感が生じているためその原因を目で見ることができません。そのため、理解されづらいという側面があります。

一番左の背の低いお子さんが、試合を観るために木箱を2つ使うのをズルいと言う人や木箱を使えば身長が伸びなくなる、と言う人はきっといないでしょう。

同じように、ディスレクシアの子のタブレット使用に対する「●●さんだけ特別扱いはできない」「タブレットを使用しては書字の苦手さが改善できない」という主張には正当性がないことは明らかです。

子どもたちには、一体どんなサポートを叶えるのが適切なのでしょうか?もし、発達障害への無理解から合理的配慮の実践が進まない場合には、ぜひこの図表を元に議論をしてみてください。周囲の人のの「発達障害リテラシー」が子どもたちの学びの妨げにならないよう、社会全体での理解を促進していきましょう。

※※図の使用について※※
発達障害啓発目的・非商用利用の場合に限り、引用・転載を許可します。その際には、引用元として本ページ名を明示してください。なお、著作権はTEENSが所有しており、図の二次利用・改変は禁止とします。商用利用を希望される場合は(teens@teensmoon.com)までご連絡ください。

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*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

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