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発達障害のあるお子様向け キャリアデザイン教育
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こんなときTEENS 第4弾~発達障害児のためのキャリアカウンセリング~

こんなときTEENS 2015年10月20日

TEENS横浜の飯島です。

テスト期間に入りまして、中高生はテスト勉強の真っ最中です。こんなときTEENS第1弾でも書きましたが、TEENSでは勉強のみならずその方法や段取りの指導も行っています。なお、学習支援は最大30分×3セッションとしていますが、テスト期間に限り、最大+2セッションを自習時間として利用することもできます。30分自習をして、次の30分にスタッフから確認問題を出す、というのを繰り返すことも可能です。

青が自習でオレンジが通常セッション。
基本的には、自習ができるテスト前の中高生向けの対応です。

さて、少し脇道にそれましたが、予告通り就職に関するカウンセリングについてお話していきます。TEENSで通われているお子様で高校卒業後に就職する、という方は多くはありませんが、大学や専門学校に進学するにしろ、現実的な将来を見越しての進路選択ができるとよりよいでしょう。

キャリアカウンセリングでは、以下のようなアプローチを行う場合が多いです。

1.「やりたいこと」と「できること」を分けて考えさせる

ASD(自閉スペクトラム症・アスペルガー症候群)のお子さんに特に多いのですが、客観視が難しいため自分の能力を過大評価あるいは過小評価して、現実的ではない将来をイメージしているお子さんは少なくありません。以下で例を挙げます。

パターンA:過大評価タイプ

子どもの頃に親戚の人に言われた「末は博士か大臣か」と言葉を鵜呑みにして、それ以来博士になることを目指している。しかし、実際はLD傾向なこともあり勉強が大の苦手で、電車への興味関心は高いが特別といえるほどの能力ではない。幼い頃は周囲も温かい目で見ていたが、大学進学も簡単ではない状況下で「博士になるなら何浪してでも東大に行かなきゃ」と言っており、両親も困っている。しかし実際は勉強もせずダラダラしており、塾での模試の結果も悪いが「今回は調子が悪かった」と言い訳をする。

こういったタイプの場合、「周りに無理矢理諦めさせられた」と引きずらないよう、チャレンジさせるのもひとつの手段です。しかしその場合は、「センターで〇〇点以上取れなかったら浪人せず滑り止め校に行くこと」というようにルール設定をしておけるとよいでしょう。また、「博士は勉強ができないと難しそうだけど、君は手先が器用だからもっと別に向いている仕事がありそうだね」というように、本人の本当の強みを見つけて引き出してあげることも大切です。

パターンB:過小評価タイプ

小学校時代いじめられていたことがあり、「どうせ…」が口癖。親御さんとしては高校卒業後働いてほしいが、本人に全くその気がない。全体的に無気力で、「僕にできる仕事なんてない。一生ゴロゴロして暮らしたい」とこぼしている。大人からの指示に従うことはできるが、面接に行ってもまともな受け答えができない。進学の希望もなく、趣味のゲームにだけ熱心さを見せる。

過小評価タイプは、パーソナリティーの要因もありますが、過去の経験からそういった気質になることがよくあります。ASD(自閉スペクトラム症・アスペルガー症候群)の人の場合、フラッシュバックがあり鮮明に記憶が蘇り、忘れたくても忘れられない、ということもあります。対策としては、「記憶に残るような成功体験を積む」ということが大切です。今回の場合で言えば、実習に行く等してそのご褒美にゲームを買ってあげるなどが考えられます。労働の中で得られる達成感があればそれが一番ですが、労働からは対価が得られる(=お金がもらえる)という実感も重要です(逆に言うと、それ以外のシーンではゲームを買い与えるなどは避けた方がよいでしょう) また、親がいつまでも養えるわけではなく、自立の必要性についても伝えていく必要があります。

2.具体的な職業イメージをつけさせる

TEENSのお子さん「将来どんな仕事に就きたいの?」という質問をすると、圧倒的に多い返答は「パソコンを使う仕事につきたい」というものです。小学生くらいならばそれでもよいですが、高校生相手には「じゃあパソコンを使ってどんな仕事がしたいの」なんて意地悪な質問をついついしてしまいます。そして大体の皆さんは答えられません。(先ほどの過大評価タイプのお子さんも、‘何の’博士になりたいというビジョンはないのです)

この目標に向けてタイピングやExcelの練習を頑張って行っているお子さんもいますが、現実的にはいくらタイピングが速くて色んな関数を知っていても、必ずしも仕事には繋がりません。パソコンを用いるような事務作業はデータを読んで意味を理解したり、解釈したり、判断したりというような能力を求められます。単純な入力作業というのはフルタイムで働く場合、あまり多くありません。

働く=スーツを着てパソコンの前に座っているサラリーマン、というステレオタイプな思い込みをしている、というのも理由と考えられます。そのためカウンセリングの席では、世の中にはどんな職業があって具体的にはどんなものを目指していきたいのか、どんな職業ならつけるのかということを整理するお手伝いをします。

(併せて一般就労や障害者雇用というようなキーワードの理解も必要になります。こちらについてはまた別の機会に詳しく書きたいと思います)

3.その職業に就くまでの段取りを考えさせる

進学がよいのか、職業能力開発校のような訓練ができる学校に行くのがよいのか、すぐ就職を目指すべきなのか、就労移行支援を利用すべきなのか…選択肢は様々です。普通学校に通っている場合、職能校や就労移行支援の存在すら知らない場合もあるため、そちらから説明していく必要があります。

4.その職業につけなかった場合のことを考えさせる

進学の時と同じですが、挫折の精神的な負担を最小限に抑えるために、先の見通しを立てておくことが重要です。

発達障害*のお子さんに限らず、現代社会で高校生程度の年齢のお子さんが将来についてリアルに考え、自立的に進めていくのは難しいです。本来であれば学校からの指導を期待したいのですが、就職について協力的でない学校もあり、特に障害者枠での就職を目指す場合、普通学校だと対応が難しいのが現状です。そのため、次回はTEENSで行っている、就職に向けての具体的な取り組みについてお話していきたいと思います。

 

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

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