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発達障害のあるお子様向け キャリアデザイン教育
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『発達障害児の思春期に伴走する(前編) 』

思春期 2015年11月13日

TEENS新宿スタッフの金井です。
新宿校はどういうわけか、高年齢児の割合が大きいです。最寄駅がターミナル駅の新宿ということから学校帰りに寄りやすいことがひとつ、元々TEENSの一号店が新宿校だった関係で遠くからでも通いたいと入所してくださり、今でも馴染みのある新宿校に通い続けてくださっているお子さんが多いこと。つまり、遠くからでも通える=高年齢児になるのかなと分析しています。高校生が約5割、中学生が約3割、小学生が一番少ないんです。これほど平均年齢が高い事業所も珍しいのではと思っていますが、高年齢児が中心ということは、必然的に彼らの「思春期」と向き合わざるをえません。そこで、ここからは日頃思春期のお子さんと関わる中で感じていることをスタッフの立場で綴らせていただきます。

そもそも思春期とは

思春期とは、第一義的には男性らしい身体、女性らしい身体に向かって急激な成長を遂げる時期です。自身の様々な変化に戸惑い、「自分は他の人と違うのではないか」「自分とは何者か」という疑問にぶち当たります。ナイーブで悲観しやすくなったり、他者の評価に敏感になったりしたかと思えば、必要以上に自分を良く見せようと背伸びをしたり、周囲の大人もしくは社会的権威や規範に対して批判的になったりする場合もあります。何年かかけて心の中の葛藤を繰り返しながら、「これが私(僕)でいいんだな」という折り合いをつけられるようになり、少しずつ落ち着いていくお子さんが多いようです。心も身体も自立した大人になるために必要なプロセスとはいえ、自分でも正体がよくわからないイライラやもやもや感に苛まれるのはなかなか大変で苦しいことです。

また、思春期という時代には、所属するコミュニティがどんどん増えていきます。幼い頃は、付き合いと言えば近所に住んでいるクラスメイトだけだったのが、部活動、委員会と生徒主体の活動に多かれ少なかれ参加することになり、他にも体育祭や学園祭、合唱コンクールなどの行事の際には、小学校低学年の頃とは比べ物にならないほどの密度の濃い関係性を築くことが求められます。さらに、異性への関心も高まり、交際を始めるお子さんも出てきます。近年では、SNSやオンラインゲームなどのネットを通じた交友関係を楽しむお子さんも少なくありません。

当然、同年代の仲間と過ごす時間や幅が広がれば、それだけ人間関係は複雑化するのですが、思春期の不安やストレスを和らげてくれるのもまた信頼できる仲間との付き合いだと言えます。互いに心地よい距離感を維持し、自分だけ浮かないようにしなければなりませんが、その語らいの中で悩みを共有したり、互いに知識を与え合ったりしながら解消できるものもたくさんあるわけです。

発達障害*のあるお子さんの思春期

TEENSに通うお子さんの場合は、言語表現が上手でなく、周囲の人と太い関係を結ぶことが苦手であるために、上記の「思春期の混乱を人間関係で乗り越える」ということが難しいことがあります。「いつも失敗してしまう」と心を痛めていながら誰にも相談することができなかったり、自分の弱みを直視したくない気持ちに無自覚なまま蓋をして逆に強がってしまったり、孤独感や疎外感を感じているのに関わり方が分からずにかえって人を遠ざける言い方をしてしまったり。。。ということがかなりの頻度で起こります。

また、クラスメイトが注意や忠告をしてくれたことを意に介さずに無視してしまう、異性から親切にされたことを特別な好意だと勘違いして近づきすぎてしまうなど、受け取り方のズレからもトラブルに巻き込まれやすいです。さらに、定型発達のお子さんであれば楽しめるちょっとしたルール違反や冒険心も、白黒をはっきりつけたがる、曖昧さやイレギュラーを受け入れづらいという特性のために、「規則をないがしろにするなんて許せない」と正論を訴え続け、周囲から敬遠されてしまうというケースもあります。

一番身近な理解者であるはずの親には「うるさい」「分かってるよ」と反発し、学校であったことや自身の失敗についてほとんど話さなくなる一方で、不安やストレスを処理できず、いつのまにか無意識にため込んでしまいがちです。時には、それが強い自己否定や無力感につながり、二次障害というメンタル的な症状にまで進んでしまうことがあります。二次障害の具体的な中身についてはまた別の機会にこのブログで書かせていただきますが、TEENSのお子さんを見ていると、何らかの二次障害的な状態が認められるお子さんの率は年齢が高くなるにつれ、ぐーんと高くなる印象です。できるだけ早く周囲が気付いて、適切な介入をする必要があります。

後編ではTEENSがお勧めする伴走の仕方をご紹介

ただでさえ物凄い混乱状態の中に投げ込まれる思春期が、発達障害のあるお子さんの場合にはより大きな壁となります。障害受容の問題と重なったり、保護者の側の子離れの問題と絡んだりすれば、なおさら複雑です。TEENSスタッフも日々試行錯誤しながら思春期を迎えたお子さんと格闘していますが、後編では実際にどのようなアプローチをしているのかをご紹介したいと思います。

 

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

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